ほくろ除去
ほくろ除去
ほくろは医学的には色素性母斑、単純黒子などとよばれます。色素性母斑は皮膚に存在する「メラニン色素」をつくる細胞(メラノサイト)が変化することでできる良性の皮膚腫瘍です。色は茶色から黒色、青色、褐色のものまでさまざまで、大きさや形、盛り上がりの有無なども人によって異なります。また生まれつきある先天性母斑と、年齢とともに増えていく後天性母斑があります。
色素性母斑は母斑細胞が存在する位置によって、表皮真皮境界部に母斑細胞が存在する境界型母斑、表皮内および真皮内に母斑細胞が存在する複合母斑、真皮内に母斑細胞が存在する真皮内母斑に分類されます。便宜上20センチ以上のものは巨大母斑と呼ばれ(1)、日本人の巨大色素性母斑の3.2~5.6%に悪性化が認められるという報告があります。(2)
単純黒子は後天性で生後数年から数十年で出現します。大きさは通常1~5ミリ程度で、色素性母斑と比べて小さい傾向があります。組織学的には母斑細胞を認めず、色素細胞の増殖とメラニン色素の沈着が確認されます。
多くの場合は健康上の問題はなく、そのまま経過観察しても差し支えありません。しかし、中には大きさや形、色に変化が見られるものがあり、そうした場合には「皮膚がん」など悪性疾患との鑑別が必要になります。また、美容面や生活上の支障から治療を希望される方も少なくありません。
ほくろができるはっきりとした理由はわかっていません。色素性母斑は、胎生期と言って母親のおなかの中にいるときからある母斑細胞が、生まれた後も少しずつ増殖し、目に見えるようになったものです。単純黒子も原因はわかっていませんが、親にほくろが多いと子供もほくろが多くなる傾向があるほか、日焼けをするとほくろが増えやすくなるといわれるため、遺伝や紫外線の刺激との関連性があると考えられています。
また、女性の場合、妊娠中にほくろが増えたり、色が変化したりすることがあり、女性ホルモンも影響している可能性があると考えられています。ほかにも単純な刺激や摩擦もほくろの原因となる可能性があると言われています。
一般的なほくろは、皮膚にできる直径数ミリから1cm程度の黒色または茶色の斑点で、平坦なものや、やや盛り上がっているものが見られます。通常は痛みやかゆみといった自覚症状はなく、日常生活において特に問題を生じないことが多いのが特徴です。
しかし、次のような変化が見られる場合には注意が必要です。特に短期間での形状や色調の変化、急激な増大、境界の不明瞭化などがある場合は、悪性の可能性もあるため、自己判断せず早めに医療機関での診察を受けましょう。
これらの症状がある場合、皮膚がんが疑われることがあります。変化に気づいたらすぐにご相談ください。
ほくろの治療には切除やCO2レーザーなどいくつかの方法があります。ほくろの部位や大きさ、推測される深さなどを考慮して最適の方法を選択しますが、最も大事なことは患者様ご本人の希望になりますので、しっかりとご希望を伺ったうえで治療を行います。
形成外科専門医が手術を担当するので、できる限り整容面に配慮した傷の縫合を行います。
局所麻酔時の痛みを完全に無くすことはできませんが、できるだけ細い針を使用し、振動を与えてごまかしながら打ちます。
診察・相談
大きさや形、部位を確認し、切除やCO2レーザーなどの中で最も適した方法をご提案します。必要に応じて病理検査を行うこともあります。
局所麻酔
局所麻酔時の痛みを完全に無くすことはできませんが、できるだけ細い針を使用し、振動を与えてごまかしながら打ちます。
切除・止血・縫合
できるだけ傷が小さくなるような切開ラインを決め、メスなどでほくろを切除します。必要に応じて電気メスなどで止血した後に縫合します。
術後
縫合後はガーゼとテープで圧迫します。シャワーは翌日から可能になります。抜糸は約一週間後となります。抜糸後は傷の保護と日焼け予防などの目的でテーピングを推奨しています。
美容目的でのほくろ除去は自費診療になりますが、出血やかゆみを伴う場合、悪性の可能性が疑われる場合などは保険適応となるケースがあります。診察の際に医師が判断いたしますので、気になる方はご相談ください。
手術後は一時的に赤みや腫れが出ますが、時間の経過とともに目立たなくなります。当院では形成外科的な縫合法を用いて、できる限り自然な仕上がりを心がけています。傷跡の経過観察やケアについてもフォローいたしますので安心してお任せください。
当院では、患者様のほくろの状態やご希望に合わせて、切除法・電気メスによる焼灼法・レーザー治療など複数の方法から最適な治療をご提案します。多くのケースでは局所麻酔下での日帰り手術が可能で、身体への負担も少なく、短時間で治療が完了します。顔や首など目立つ部位では見た目の自然さや術後の仕上がりにもこだわった治療をご提案しています。気になるほくろがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
傷跡が完全に無くなることはありません。できるだけきれいな傷跡になるように丁寧な手術を心掛けます。最終的に傷はやや白みがかった一本の線になることが多いです。
手術後は傷を治すために必ず赤くなります。手術後1ヶ月が赤みと硬さのピークで、そこから徐々に時間をかけて傷がやわらかくなり、赤みが落ちてきます。術後経過や個人の傷の治り方、手術箇所にもよりますが、6ヶ月から12ヶ月ほどで落ち着きます。この段階を成熟瘢痕と言い、やや白みがかった一本の線になることが多いです。この期間を超えて傷が赤く盛り上がっている場合は、ケロイドという状態になっている可能性があるので、受診をお願いします。
残念ながら完全に再発しない方法はありません。除去の方法により再発率は異なり、切除術での再発はほとんどありません。CO2レーザーでは再発率は高めに出ますが、ほくろの状態により再発リスクは大きく異なります。詳しくは診察時にご説明します。
赤みが取れるまで6~12ヶ月ほどかかります。
傷の周りを除けば翌日から可能です。傷の上は抜糸後に可能となります。
運動は術後3日まで控えてください。その後は様子を見ながら徐々に軽いものから開始していくことが可能です。シャワーは翌日の夜から可能です。浴槽につかるのは抜糸後になります。
(1)Kopf A W et al : Giant congenital nevocytic nevi and malignant melanomas. J Am Acad Dermatol 1 : 123 130. 1979
(2)Hori Y et al : Giant congenital nevus and malignant melanoma. J In vest Dermatol 92: 31OS-314S. 1989
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