ワキガ
ワキガ
ワキガは腋臭症(えきしゅうしょう)とも呼ばれ、わきの下が独特の臭いを発する状態を言います。脇にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺と呼ばれる2種類の汗腺があります。(厳密にはもう1種類の汗腺が存在すると言われていますが、とても数が少なく問題になることもないので省略します)前者のエクリン汗腺は皮膚の中にあり、分泌する汗の99%は水分で、その他には塩化ナトリウムやカリウムなどを含む電解質や尿素や乳酸などが含まれます。
後者のアポクリン汗腺は皮膚の下にあり、分泌する汗には脂質やたんぱく質が多く含まれます。エクリン汗腺は全身の皮膚、特に手のひらや足の裏に多く分布します。一方でアポクリン汗腺は腋窩(わきの下)、乳輪、外陰部、外耳道などの限られた部位に存在します。このアポクリン汗腺から出る汗が細菌によって分解されることで独特の臭いを発します。腋毛(わき毛)が生え始める時期に発症することが多く、臭いのピークは20歳ごろと言われています。ワキガには家族性があり湿性耳垢を伴うことが昔から報告されていて、湿性耳垢の80%にワキガがあるとされています。
また日本人全体でみると約10%にワキガがあると言われており、多くの方が悩みを抱えています。コンプレックスになることもあり、日常生活に支障をきたすことがあります。
特に思春期以降に症状が目立つようになり、学校生活や仕事、恋愛、結婚など人生の大切な場面で大きなコンプレックスとなることも少なくありません。ワキガは体質によるものであり、市販の制汗剤や一時的な治療では根本的に解決することは難しいのが現実です。臭いを本格的に改善するには、原因となるアポクリン汗腺を取り除く外科的治療が必要とされています。
ワキガが起こる背景にはいくつかの要因があります。
ワキガは昔から家族性があり優性遺伝に従うことが報告されてきました。多くは湿性耳垢を合併し、湿性耳垢の80%がワキガであるという報告があります。
ワキガの最も大きな原因は、アポクリン汗腺の数や大きさです。遺伝的な体質によってこの汗腺が多い人や発達している人は、分泌される汗の量が多くなり、においが強くなります。
アポクリン線より分泌された汗が皮膚の常在菌に分解されることで生じる低級脂肪酸(酸っぱい臭い)、揮発性硫黄化合物(硫黄臭)、揮発性ステロイド(アンモニアのような臭い)がにおいの原因となります。
性ホルモンにアポクリン汗腺を活性化させる作用があると言われています。発症が思春期前後であることに関与しており、女性の場合は月経時に臭いが強くなるという報告もあります。
ストレスにより発汗が増加して臭いが強くなるという報告があります。食生活、香辛料、喫煙も腋臭症との関係が指摘されていて、特に動物性脂肪はアポクリン汗腺や皮脂腺を活性化すると言われています。
ワキガの診断で客観性の高い確実な診断法はありませんが、良く行われる検査にガーゼテスト法というものがあります。これは脇に一定時間ガーゼを挟み、その臭いをチェックするという方法です。臭いの程度に応じて5段階に分かれます。臭いの評価は客観性に乏しく、レベル1と5は比較的判断が容易ですが、その以外は判断が難しいことがあります。特にレベル2と3の判断は難しいことがあります。
レベル1:臭わない
レベル2:ごくわずかに臭いがわかる
レベル3:鼻を近づけると臭う(軽度のワキガ)
レベル4:鼻を近づけなくても臭う(中等度のワキガ)
レベル5:ガーゼを手に持つだけで臭う(重度のワキガ)
ワキガの臭いはアポクリン汗腺から分泌された汗が細菌に分解されることで生じるので、汗の量を減らす、細菌の量を減らす、臭いを抑え込むといった治療法が有効となります。汗の量を減らす方法としては、汗の通り道(汗管)を塞ぐ方法(塩化アルミニウム溶液の塗布など)、アポクリン汗腺を切除する(皮弁法(保険)、クワドラカット(自費)など)、アポクリン汗腺を破壊する(マイクロ波、ラジオ波)などがあります。
細菌量を減らす方法としてはアルコールなどの消毒薬での消毒や抗生剤の塗布などがありますが、抗生剤は長期使用による耐性菌の出現が危惧される為おすすめしません。当院では最も歴史が長く確実な方法として皮弁法での手術をおすすめしています。
症状の強さは人によって異なり、軽度の場合は自分自身でも気づかないことがありますが、周囲の人には不快感を与えてしまうこともあり、精神的なストレスにつながることが少なくありません。ワキガは、なかなか相談しづらいお悩みですが、医学的に治療可能な疾患です。一人で悩みを抱え込まず、まずは専門の医師に相談することで、改善への第一歩が踏み出せます。
こうした悩みは、本人にとっては深刻な問題です。特に「自分では臭いが分からない」こともあり、指摘されることで大きなショックを受ける方もいらっしゃいます。当院では、そうした方に安心して相談していただける体制を整えています。
当院のワキガ手術は保険診療です。
アポクリン汗腺を直視下で確認しながら確実に切除します。
日曜日手術や片側のみの手術、両側同時手術などのご希望にできる限り対応します。
皺に沿った目立ちにくい傷となります。(傷がなじむまでには半年~一年ほどかかる場合があります。傷の治り方には個人差があります。)
診察・カウンセリング
まずは医師が脇の状態を診察し、症状の程度や手術の適応について丁寧にご説明します。不安や疑問があれば、カウンセリングの段階でしっかり解消していただけます。基本的には後日の手術となりますが、その日の状況次第では当日の手術も可能です。ご希望がある場合はご相談ください。
局所麻酔
手術部位に局所麻酔を行います。処置中の痛みはほとんどなく、リラックスした状態で受けられます。
切開・汗腺除去
脇の下を4~5センチ切開し、医師が直接目で確認しながらアポクリン汗腺を取り除きます。手術時間は片側で30分〜1時間程度です。
縫合・固定
傷を丁寧に縫合し、出血や腫れを防ぐために脇を圧迫固定します。この処置によって術後の回復がスムーズになります。
術後説明・帰宅
手術後はそのままご帰宅いただけます。日常生活への復帰も比較的早く、翌日から軽い活動が可能ですが、一週間後の抜糸までは腕の運動制限があります。
手術後は数日間、脇の部分を安静に保つことが大切です。重い荷物を持ったり、激しい運動をするのは控えていただきます。傷の経過を確認するため、定期的に通院していただき、必要に応じて消毒や抜糸を行います。
ワキガは「体質だから仕方ない」と諦めてしまう方も少なくありません。しかし、現代では安全で効果的な治療法が確立されており、日帰り手術で根本的に改善できる可能性があります。脇のにおいに悩み、生活の質が下がってしまっている方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちは患者様の悩みに寄り添い、安心して日常生活を送れるようサポートいたします。
一時的なにおいの改善には有効なことがあります。
制汗剤やデオドラント、抗菌剤、ミラドライ、ビューホットなどがあります。当院では最も確実な保険適応での手術をお勧めしています。
大人であれば多少の後戻りが見られることはありますが、基本的に元に戻ることはありません。子供の場合は再発することがあります。
おすすめは18歳以降です。理由は再発しやすいこと、安静が困難なことがあること、成長期前に手術をすると将来的に皮膚拘縮(ツッパリ)を起こす可能性が否定できないことなどです。ガーゼテストでワキガと診断され、本人の希望がある場合は、しっかりとリスクを説明したうえで、未成年でも手術を行うことが可能です。
術後4~5日でシャワー可となります。入浴と運動は術後1週間の抜糸後になります。傷の状態によっては延期となることがあります。
遺伝すると考えてよいです。両親がワキガの場合は約80%、片方の親がワキガの場合は50%で遺伝すると言われています。また湿性耳垢の80%がワキガと言われています。
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